SaaSにおけるセールスの呼び方
テレアポインター、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーセールスなど、営業という職種であっても様々な呼び方が存在しています。
皆さんは、フィールドセールスとアカウントエグゼクティブについてお聞きになったことはありますか?両者とも基本的には、SaaS組織における営業(クロージング)を行う人たちのことを指しています。今回は、会社ごとになぜ呼び方が違うのか、その名前に込められた意味から解説していきます。
筆者はアカウントエグゼクティブを経験していませんが、実際に見聞きした経験を元にこの記事を書いていきます。
筆者自身は、フィールドセールスを3年、インサイドセールスを3年ほど経験しています。本記事は、その経験をもとに書いていますので、少し偏った記載もあるかもしれませんが、ご了承くださいませ。
フィールドセールスとは
それでは、フィールドセールスから見ていきましょう。フィールドセールスは、The Modelの体制においては一般的に呼称される営業部門の名称です。フィールドセールスを日本語に訳すと、「外勤営業」となります。
ミッション
彼らのミッションは、「新規アカウントからのMRR最大化」です。
マーケティングの部署が獲得したリードをインサイドセールスが架電して、ナーチャリングし、アポイントを獲得します。獲得した1企業のアポイントから新規の受注とMRRの獲得を目指し商談を行なっていくのがフィールドセールスの主な役割となります。
よって、アカウント(企業)を受注した後は、カスタマーサクセス部門に企業を引き継ぎ、フィールドセールス自身はまた、新規のアポイントをこなしていきます。パッケージの契約後は、関与せずあくまでも既存顧客からの売上はカスタマーサクセス部門に依存する形態となります。
フィールドセールスを採用するメリットとしては、単純に受注までを担うため、新規受注までの効率や受注後のオンボーディングの効率化が進みます。しかし、分業で作業効率が上がるばかりに既存顧客との関係性が深まらず、1企業あたりのLTVは伸び悩む傾向にあります。
どんな企業が採用している?
日本のSaaS企業のほとんどが踏襲している形と言えるでしょう。The Modelの考え方が徐々に広まってきて、従来の「営業マン」という概念から「フィールドセールス」に変わっていきました。そのため、1受注に対してコミットする「フィールドセールス」が多いのが日本企業の特徴とも言えるのではないでしょうか。
フィールドセールスに関しては、悪い言い方をすると、フィールドセールスからすると「受注して終わり」のような形態になります。会社としては、「受注して終わり」ではなくカスタマーサクセスが受注以降を引き継ぎます。
アカウントエグゼクティブとは
それでは、アカウントエグゼクティブを見ていきましょう。そもそも聞いたことがある人はいますでしょうか。あのThe Modelを提唱した「Salesforce」が採用しているモデルです。アカウントエグゼクティブを日本語に訳すと、「企業の管理職」となります。
ミッション
彼らのミッションは、「担当する企業単位でのMRR最大化」です。
マーケティングからインサイドセールスの流れは同じで、インサイドセールスからアポイントを受け取り受注するまではフィールドセールスと同じ考え方になります。しかし、受注後カスタマーサクセスに渡して新規の案件に注力するだけではなく、企業の担当として、企業のオンボーディングに同席したり、定期MTGに同席しながら、企業のサクセスにもコミットします。
契約後も企業単位で、他の部門への展開、機能追加、子会社への展開などの狙っていきます。それにより企業単位でのARPAが増大し、LTVが最大化していきます。
アカウントエグゼクティブを採用するメリットとしては、企業側との関係性を深めることはもちろん、より顧客に深く関わることで、1企業あたりのLTVを最大化することができるようになります。
どんな企業が採用している?
言わずもがな、Salesforce社です。Salesforceでは、アカウントエグゼクティブという呼称になっているはずです。まだまだ日本の企業では採用されることは少ないと言えるでしょう。Salesforce社のように1社1社の担当につきながら、既存の売上と新規の売上を両方追いかける営業はなかなか日本ではないかもしれません。
ただし1社あたりのLTVが最大化するかつ既存顧客との関係性も深くなることで、より顧客紹介につながる可能性が高いと言えます。
フィールドセールスとアカウントエグゼクティブの違いについて
それでは、フィールドセールスとアカウントエグゼクティブで、どんな違いが具体的にあるのでしょうか。
日々の行動
まず、日々の行動が変わってきます。
フィールドセールスの場合、成果を創出するために一つでも多くのアポイントや受注数を増やす傾向が出てきます。そのため、より温度感の高いアポイントをインサイドセールスに要求したり、1日あたりの商談数も多くこなすようになると言えるでしょう。
アカウントエグゼクティブはどうでしょう。1企業ずつの担当制になるため、企業情報の調査や既存顧客との定期MTGや、会食などの既存顧客との関係性を深めるMTGが増えてくると言えるでしょう。その結果、1日の多くの時間を既存顧客とのMTGに使うようになります。
営業のスタンス
次に営業のスタンスも大きく変わります。
フィールドセールスの場合は、より多くの受注数をこなすために、契約したら終わりで、その後の企業の動向やサクセスまでコミットすることは少ないです。SMB顧客が多い場合、創出されるMRRは、アカウントエグゼクティブよりも大きくなる可能性は高いと言えるでしょう。
しかし、アカウントエグゼクティブの場合、契約しても顧客がサクセスしない限り自身のKPIは達成されません。そのため、既存顧客深耕を行い様々な部門と接点を持っていきます。MMBを超えるエンタープライズ企業においては、成果が最大化し、1社あたりのLTVはフィールドセールスとは比べ物にならない金額になる可能性が高いです。
それぞれ採用する企業の特色
それぞれのパターンを採用する企業の違いはなんでしょうか。
フィールドセールス
フィールドセールスは、従来の営業に近いスタイルです。
インサイドセールスから、カスタマーサクセスまで完全なる分業制を強いており、一般的に1顧客からのNRRが少なく、単価が低いSMBが中心のSaaSに多いと言えるでしょう。また、クロスセルやアップセルがしにくい商材でも、同じことが言えるかもしれません。
アカウントエグゼクティブ
アカウントエグゼクティブは、既存顧客営業に近いスタイルです。しかし、他の部門への展開や子会社への展開など、既存顧客に深く入るこむことで、LTVが最大化する可能性の高い、エンタープライズ企業をメインとした商材や、1ユーザーあたりの単価が高い商材に多いと言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
アカウントエグゼクティブを初めて聞いた方もいらっしゃるかもしれません。企業のターゲットや商材の特性によっては、アカウントエグゼクティブを採用することが、事業のLTVとCACのバランスを最も整えやすい方法と言えるかもしれません。これを機に検討してみるのも良いのではないでしょうか。
また、フィールドセールスについてはこちらの記事で解説していますので、ぜひ一度こちらもお読みください。