インサイドセールスは辛いのか
一般的にテレアポは、「顧客に怒鳴られるのが辛い」「電話の量が多すぎて業務が逼迫して辛い」など辛いイメージとセットになっています。バブルの時代から現在に至るまで、「電話営業」といえば、こういったイメージが浸透していると言えるのではないでしょうか。
しかし、昨今急速に、広まりつつある「インサイドセールス」が辛いと言われる要因はなんでしょうか。テレアポとインサイドセールスは混同されることが多いのですが、似て非なるものです。
テレアポとは異なるインサイドセールス
「テレアポ」とはテレフォンアポインターの略です。 電話営業とも呼ばれ、電話を使ってアポ取りをする人や手段のことを指します。
一方で「インサイドセールス」とは、内勤型営業のことで、電話やオンラインツールを利用してアポ取りを行う「The Model」と言う考え方における一つのセールスの在り方のことです。
2つは似て非なるようなもので、今回の記事では二つの違いも含めて解説していきます。また、近年「インサイドセールス」を導入する企業が増えてまいりました。「インサイドセールス」と呼ばれているが、実態はテレアポと変わらないという文脈で「辛い」という声を聞くこともあります。
今回も筆者の実体験も踏まえながら、インサイドセールスが「辛い」と感じるポイントについて、解説していきたいと思います。
筆者自身も、いわゆるSaaS(Software as a Service)のインサイドセールスとして3年近く勤務した経験がございます。インサイドセールスが辛いなと感じることは、たくさんありました。テレアポ=インサイドセールスではありません。インサイドセールスはもう少し高度な仕事です。
インサイドセールスとテレアポの3つの違い
インサイドセールスがいわゆるテレアポと違うポイントは大きく分けて3つ存在します。まずはそれぞれ解説していきます。
追っているKPIが違う
まず1つ目の違いは「追っているKPI」が違うという部分でしょう。
ではテレアポのKPIは一体なんでしょうか。テレアポのKPIはズバリ「アポイントの数」です。「課題がなくてもいいから、1回話だけ聞いてほしい」ととりあえずアポイントを切るといったケースです。このままフィールドセールスにアポイントを振るケースもあるでしょうが、「アポイントを行っていただくこと」が目的になってしまい、結果としてただの時間の無駄になってしまうケースも多々あります。
一方でインサイドセールスが追っているKPIは、「アポイントの数」にも「商談化率」にも「受注数」にもなります。違いとしては、テレアポのように「アポイントの数」という限定的にはなっていないという点です。
出典:【徹底解説】営業プロセスを最適化・効率化するThe Model(ザ・モデル)とは?
マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスにおけるTheModel型の組織における最終目的は、健全な経営を実現していくことです。契約を獲得するだけではなく、契約を継続していただいたり、継続しているアカウントから追加の契約を頂いたりすることも組織にとって重要なKPIとなります。よって、それぞれ領域で分業をされてはいますが、最終的な売上を最大化させるために、必要な行動指標や目標を追っていく。そういう意味で、都度KPIを変えていくことができるのが、インサイドセールスと言えるでしょう。
顧客接点の種類が違う
次に、顧客との接点づくりにおいて利用するツールの違いです。
テレアポはその名の通り、基本的に電話のみです。電話を行いアポを取得します。アポイント時も訪問の場合はメールすら使わない場合もあります。よって、テレアポで顧客とのコミュニケーションに利用するツールは、「電話」「メール」の2種類です。昭和の時代から利用されていたツールですね。30~40年ぐらいアップデートされてはいません。
さて、インサイドセールスはどうでしょう。電話やメールはもちろんそれ以外のツールも利用します。例えばMAと呼ばれる「見込み顧客を育成」していくためのマーケティングオートメーションツールです。メール開封やクリック、顧客のHPの回覧状況、資料閲覧などの多くの情報を取得し、顧客の興味関心を知ることが可能です。また、顧客の温度感を高めるため、「ウェビナー」や「ホワイトペーパー」を作成します。様々なツールを用いて顧客接点を作っていくというのがインサイドセールスとテレアポの違いと言えるでしょう。
前後部署との連携
最後に前後部署との連携です。
テレアポの場合、マーケティングの部署やフィールドセールス部署にフィードバックや改善要望を上げることはまずありません。なぜなら彼らのKPIはアポイントを獲得することのみであり、売上の最大化はKPIに入っていないからです。そのため、アポイントを獲得するためだけにマーケティング部署にリード数が少ないやら温度感が低いやらと、アポイントを獲得する上でのフィードバックを行うことはありますが、それが売上の最大化につながることはありません。
一方で、インサイドセールスの場合は前後部署との連携は、毎日行われます。マーケティング部に対しては、顧客にプロダクトの価値を伝えるWebページになっていない、ホワイトペーパーの質が下がり検討違いの顧客から問い合わせが増えている等。また、フィールドセールスに対しては、より受注率を上げるためにどういうアポを提供したら良いか?商談動画を見たが、商談相手に対してもう少し突っ込めた部分があったのではないか?など、売上の最大化をゴールとしたコミュニケーションが行われます。
上記、3点を表にまとめてみました。
KPI | 利用ツール | 前後部署との連携 | |
---|---|---|---|
テレアポ | アポ数 | 電話,メール | なし(マーケと一部) |
インサイドセールス | アポ数/商談数/売上 | 電話,メール,MA,WP等 | マーケ、FSなど。 |
インサイドセールスが「辛い」と言われるポイントは
さて、ここまではテレアポとインサイドセールスの違いについて解説してきました。ここからはテレアポとは違うインサイドセールスが、なぜ「辛い」と言われるのか、そのポイントについて迫ってまいります。ここでは大きく3つのポイントについて解説します。
立場が弱く、TheModel型の組織の中で意見できない
インサイドセールスは、いわゆる「教育機関」と表現されることもあります。新卒や若手の中途社員が教育のために入る部署として定義している会社は多く存在します。
プロダクトの知識を得た上で他の部署に行ったり、フィールドセールスの準備期間としてトレーニングするという立て付けになっていることが多いです。そのため、知識が浅い社員が多くなかなか他部署に意見がしづらいため、売上の責任の多くを押し付けられたり、他部門からの無理な要求に従ったりと、疲弊することも少なくありません。
こういった側面からインサイドセールスが「辛い」と言われている可能性は高いです。
テレアポと同じぐらい行動量が必要
「行動量」という側面では、テレアポ<インサイドセールスと言えるのではないでしょうか。ある研究によれば、インサイドセールス(SDR)の行動量は平均1日100件を超えているというデータもあるようです。
そのため、行動量の多さに比例して業務が逼迫し、「辛い」という表現が使われている可能性もございます。
達成しても祝福されにくい
インサイドセールスは、売上の最大化がKGIとなります。そのための手前の指標をKPIとして追っているだけにすぎません。そのため、フィールドセールスの目標である、「MRR」が達成しない限りは、たとえ自部署のKPIが達成していたとしても、手放しには喜べません。
あれだけ頑張って目標を達成したのに、会社の人はそんなに嬉しそうじゃないとか、インサイドセールスは達成したのにフィールドセールスが未達だったから、アポの質が悪かったんじゃないかとフィールドセールスに言われたなど…インサイドセールスが達成して全組織が喜ぶといったことは、仕組み上あり得ないことなのかもしれませんね。
これもインサイドセールスが「辛い」と言われる所以でしょう。
インサイドセールスの魅力・将来性・まとめ
インサイドセールスの辛さやテレアポとの違いについて、解説をしてきました。一つ言えることは、インサイドセールスは、現在注目されており、需要が増大している職種ということです。
TheModelにおける最重要ポジションであり、インサイドセールスは、様々な表現を用いて比喩されることが多いです。時には、「蛇口」のようにアポの量や質を調節したりできる調整役、時にはサッカーで言うボランチとして、守備の要になったりゲームを作る起点となるパスを出したりするゲームメイカー、極めて重要な役割として認識はされ始めてきています。「辛い」ことは確かに多いかもしれませんが、一方で注目もされ始めている職種であることを忘れないようにしましょう。
また、こういった辛い経験が多いかもしれない、「インサイドセールス」に向いている人、向いていない人については、こちらの記事でも掲載していますので、ぜひご覧ください。「インサイドセールスがやめとけと言われる理由」についての記事をこちらでも掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
またインサイドセールスについてより詳しく知りたい方は以下サイトがわかりやすくなっています。ぜひご覧ください。